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獣害問題に取り組む 手作り科学館 Exedra の挑戦
- みなさま、初めまして。手作り科学館 Exedra 館長の羽村です。プロジェクトをご覧いただき、ありがとうございます。今回、お力をお借りしたい、キョン革を名刺入れとして利用するプロジェクトを紹介したいと思います。
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『科学の現場をみせる』科学館
- 手作り科学館 Exedra は、柏駅から徒歩5分ほどにある古い空きアパートを、スタッフがDIYで改修して2018年1月に開館しました。"Exedra"(エクセドラ)とは、古代ヨーロッパの貴族の家にあり、科学的な議論が行われた場にちなんだ名前です。『科学の現場をみせる』という目標のもと、スタッフが集めたり作ったりした展示物や標本などを展示しているほか、化石発掘や望遠鏡工作などの体験がいつでもお楽しみいただけます。「たまには科学を囲んでみよう」というコピーのように、東京大学の大学院生や、現役の研究者らと気軽にお話できるのが特徴です。テレビやラジオ、新聞などでも数多く紹介されている、ユニークな科学館です。
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大人気のオリジナルグッズたち
- 館内での体験をご自宅にもお持ち帰りいただきたいと、展示に関連したオリジナルグッズの開発もおこなっています。さまざまな姿を見せてくれる水晶の仲間を集めた立体図鑑や、道端に置かれた標本を見て \おぉ、これはイノシシの頭骨だな/ とつぶやく青年のイラストがカワイイTシャツまで、バラエティ豊かです。
中でも大人気なのが、キョン革を使った名刺入れとペンケース、そして骨のキーホルダーなど、生き物の恵みを生かしたグッズです。
まずはこうしたオリジナル商品が生まれた背景を紹介します。 -
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ホネとの出会いで始まった新企画
- 科学館にある日、イノシシの頭骨がやってきました。すると、ハクビシン、ニホンジカ、アライグマ、ニホンザル…骨がホネを呼び、徐々に集まってくる動物たち。次第に、皮も含めた全身が集まるようになりました。いずれも、人間の都合で駆除された生き物たちです。標本化して館内に展示し、触り、様々なことを感じ、学び取っていただく取り組みを始めました。どうして動物を殺さなければならないのか、駆除の必要ない社会にするために、自分たちにできることはなんだろうか、と考え続けました。そんな中で出会ったのが、キョンでした。
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千葉の課題 ~キョン~
- キョンは千葉県で特徴的な動物のひとつです。もともと日本には生息しておらず、動物園から逃げ出したものが繁殖したと言われています。キョンのカワイイ見た目から、人間が餌を与えたり、住宅街で見かけても追い払わなかったりしています。その結果、ダニやヒルを運んだり、独特の鳴き声で静かな生活環境を侵害したり、生態系を破壊したりする問題が顕在化しています。
千葉県では年間 5,000頭以上のキョンが捕獲されていますが、繁殖力が高く、天敵もいないため、年々生息数が増加し、生息域も拡大し続けています。 -
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駆除が必要ない未来の実現に向けた科学館の挑戦
- 特定外来生物に指定されているキョンは、人間によって持ち込まれ、人間の行動が生息数の増加を止められない要因のひとつになっています。駆除の必要ない未来を実現するためには、人間が意識と行動を変えていく必要があります。
キョンは体が小さく、一体のキョンからとれる肉や革は多くありません。そのため、捕獲されたキョンのほとんどは利活用されていないのが現状です。そこで私たちは、廃棄される個体を集め、皮と骨を教育に活用することで、意識と行動の変容をうながす取り組みをはじめました。図らずも殺されてしまった命を、駆除の不要な世界の礎として少しでも利活用しようと考えています。 -
キョンに触れる レザーの名刺入れ
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触り心地を自慢したくなる、ふわふわもちもちの手触り
- キョンの革の最大の特徴は、もちもちすべすべとした柔らかく滑らかな感触です。赤ちゃんのほっぺたのように吸い付く絶品で、一度触ると手放せません!! ふわふわの感触のシカ革をお使いの方の中には、さらにふわふわしているとおっしゃる方もおられます。
- キョン革は昔から高級革として知られ、台湾や中国から輸入されてきました。その手触りからベビーシューズなどにも使われる他、キメの細かさから眼鏡拭きに利用されたりしています。通気性や革の強度が高いのも特徴のひとつで、剣道の小手や弓道の弓掛などの武道具にも使われています。触った瞬間の感動がたまらないため、贈答品としても喜ばれております。
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素材のこだわり ~ 自然に優しい白なめし ~
- 我々はそのキョン革を、兵庫県姫路市などで盛んな伝統技法である白なめしで、自然素材を使って、天然の皮の色を活かして仕上げました。白なめしは、自然由来の素材を用いて皮をなめして革(レザー)にする手法です。柔らかくもちもちとした感触も、特徴のひとつです。
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キョンって何?そんな質問にも答えやすい、カワイイ手描きモチーフ
- キョン革のプロダクトを使っていると、その触り心地の良さから、人に触ってもらって自慢したり手触りを教えたくなります。一方、キョンという動物は必ずしも知名度が高くないため、キョンってどんな動物なの?と聞かれることもしばしば。そんな時に容易に説明できる、特徴をとらえたイラストモチーフが描きこまれているのも特徴のひとつです。1体ずつ、手描きで革をカラフルに染色しています。
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- キョンはもともと日本にはおらず、人間によって野生環境へ持ち込まれた特定外来種であり、人間が付き合い方に関する認知と理解を高めていくべき対象です。捕獲後、廃棄されるキョン達に第二の生を歩ませてあげたい、そして、人々の間に理解が広がり、いずれ駆除をしなくても良い社会を実現したいという思いで、未来を創る取り組みをおこなっています。キョン革の素晴らしい質感に触れ、未来づくりのヴィジョンに共感し、身の回りで話題にすることでその未来の実現に協力してくださる方に使っていただけたら嬉しいです。
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機能性も優れた名刺入れ
- 普段使いしていただけるよう、しっかりとマチがついているので、厚みのある名刺でも30枚以上は充分持ち運べます。メインのポケットの他に、内側に2つと、背面にもポケットがついているので、受け取った名刺の整理にも役立ちます。
どこを触ってもふわふわすべすべの手触りは病みつきになりますが、中でも特に極上の触り心地なのが、折り目の内側の部分です。型崩れしないように入れている芯材が当たらないこの部分は、キョン革の本来の柔らかさを十二分に引き出してくれていて、オススメです。 -
- これまで、雪白・真紅・群青・山吹・焦茶の5色をお届けしていましたが、この度、漆黒・新緑・桜桃の3色を新たにご準備しました。この3色は C-VALUE 限定でご用意しております。
手描きのモチーフは、体型の特徴がわかるメスの全身と、キョンがヨツメジカとも呼ばれる由来となった、目の少し前にある臭腺が目立つオスの横顔の2種類からお選びいただけます。
素材となる革は、捕獲されたキョンを集め、解体して皮を塩につけて保管し、なめして染め、製品に加工する一連の工程に、時間も労力も予算もかかります。今回のクラウドファンディングでは、色とモチーフの組み合わせに関するニーズの調査を兼ね、今後、なめし革をご用意する際の参考にさせていただきたいと考えています。受付期間終了後の生産になりますので、到着を楽しみにお待ちください。 -
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名刺入れを使って社会課題に貢献してくれる仲間を募集中
- 野生動物に関する社会課題の多くは、人間が引き金を引き、人間が悪化させています。キョンも、人間によって日本に連れてこられたものが、人間の管理の問題によって野生化したのがはじまりでした。こうした問題が今後ふたたび起こるのを防ぐには、人間が動物とのかかわり方について意識や行動を改めなければなりません。いずれ、人間が動物を死なせなくてよい社会を実現するために、いま、我々が誰でもできることです。
多くの人が具体的な行動を変え、何らかのアクションを起こすためには、まずは、人々がキョンの存在を認識する必要があります。そこで、キョンのモチーフが描かれたキョン革の名刺入れを使い、だれかの目に留めていただくことで、社会課題の解決に向けた協力をしてくださる仲間を募集しています。名刺入れを介して、キョンが人々の話題にのぼるだけで、大きな力になります。ぜひ、応援のほど、よろしくお願いします。
名刺入れは桐箱に入れてお届けいたしますので、贈り物にもピッタリです。 -
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重要なのは、きっかけとなる体験
- 虹を見たことがなければ、虹のたもとがどうなっているのかと疑問を持つことも、その問いを掘り下げて調べることもできません。同じように、キョンを知らず、触れたこともなければ、駆除の理由や実態に想いを馳せることも、自分にできることを探し始めることも、利活用することも思い至りません。すべての原点はきっかけとなる最初の一歩です。その時に、見たり触ったりという体験が伴えば、印象はより強くなることでしょう。
ぜひ、名刺交換の後に話題にしたり、日ごろからもちもちした革の感触を楽しんで気持ちを盛り上げたりしてみてください。 -
応援団を結成する
- 企業や団体の皆様にも、体験を楽しみながら応援していただければ幸いです。例えば社員の皆さんでお揃いの名刺入れを使ってみたり、以下でご紹介する体験学習ワークショップを社員さんとそのお子さんに体験いただいたり、本社に標本を展示していただいたりと、ぜひ、企業や組織として研修や福利厚生の一環としてご活用をご検討ください。
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仲間たち紹介
- このプロジェクトは既に多くの方に支えていただき、実現しています。勝浦市をはじめ、鋸南町、いすみ市など各地の、キョンやその革を集めてご提供いただいている皆様、なめし加工をしてくださっている事業者様、革の利活用について技術的な指導やアドバイスをいただいている職人の皆様、取り組みをご紹介してくださるメディアの皆様など、多くの方のお力添えに、心より感謝もうしあげます。
中でも、福井県の革工房 honneki さんは、キョンの特徴が伝わるモチーフを描いてほしいというリクエストに快くご協力いただき、キョンを知り、キョンに触れるというコンセプトの最後のピースをはめてくださいました。 -
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名刺入れだけじゃない利活用
- 手作り科学館 Exedraでは、館内に標本等を展示する以外にも、様々な取り組みをおこなっています。
・標本や展示物の出張展示、街なか展示
・レザーブレスレット作りをはじめとする工作や、理科実験・体験ワークショップ
・捕獲、解剖から標本化までの一連の過程の中で学べることをまとめ、レザーブレスレットの材料や制作道具とセットにした教材キット『野生動物つかまえた』の企画・開発
・自然体験活動を通じて理科に触れ科学を学ぶ『理科の修学旅行』
・マルシェや縁日などに出展して標本に触れたりワークショップを体験したりしていただく『道の理科室』
・若手研究者が実験や工作などの体験を交えて最新の科学を紹介する『研究者に会いに行こう!』
社会課題に対し、多角的に取り組んでいるからこそ実現できる、多様なリワードを用意しました。皆様それぞれに、何かしらの体験をお届けしたいと考えています。 -
骨の利活用
- 捕獲後、廃棄されるのは革だけでなく、骨も同様です。一方、骨は動物の体の構造を支え、運動機能を実現するための特徴的な形をしています。生物の種によって異なるその形は、その動物の生きざまや進化の歴史を示しています。捕獲後に回収した個体からは、骨を取り出し、展示したり、キーホルダーに加工したりして利活用を進めています。
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- 本プロジェクトのリワードにも、キョンの頭骨の標本や、キョンの骨を加工したキーホルダーをご用意しました。キョン革の感触も楽しんでいただきたいと、名刺入れを制作した際の端材を活用して作ったスマホクリーナーもセットにしてお届けします。
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体験ワークショップ
- 科学館では、標本や展示物を設置するだけでなく、来館者の皆様に化石発掘体験や望遠鏡工作、水溶液を用いた理科実験など様々な体験を提供しています。
集めてなめした革を用いて、レザーのブレスレットを作る体験もご用意しました。財布やベルト、バッグなどで革製品を触る機会はあっても、自分で革を切ったり穴をあけたり編んだりするレザークラフトの経験がある方は、多くはありません。そこで、革を加工する体験を楽しみながら動物たちの生きざまに想いを馳せる時間を過ごしていただいています。
夏休みなどは体験イベントなども催し、多くの方でにぎわいます。 -
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教材開発 ~野生動物 つかまえた つくる!レザーのブレスレット~
- こうした体験で学べることや、想いを馳せていただきたいことを冊子にまとめ、レザーブレスレットを作る材料と道具をセットにした教材キットを企画・開発しました。『科学館のラボノート 野生動物つかまえた』という名前で販売しております。
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出張展示
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- 館内に展示している標本や展示物を、街なかの公園やショッピングモール、商店街の空き店舗などに持ち出し、通りすがりの方にご覧いただく取り組みも行っています。科学館を訪れてくださる方だけでなく、広く多くの方の目に触れるよう、精力的に出張展示を実施しています。
レザーブレスレット作りの体験も併せて行うことで、展示を見て感じたことや考えたことを自宅に持ち帰ってさらに深めるきっかけになるとともに、賑わいがうまれ、多くの方が足を止めて展示をご覧になる呼び水ともなっています。 -
解剖体験
- こうした体験の素材となる革や、展示されている骨格標本などは、人工的に作られたものではありません。もとは生き物の体を構成していたもの達です
命に感謝するとともに、その命から次の世代に伝えられる知見を読み取るため、解剖も自分たちでおこなっています。時に、教育的な目的で、解剖を体験いただくこともございます。 -
受賞歴、メディア掲載・出演歴
- 一連の取り組みは、自然保護大賞 2022で入選に選出いただきました。
また、テレビ東京 モヤモヤさまぁ~ず2,BS TBS 噂の東京マガジン、千葉テレビ news ちば、日本経済新聞、読売新聞、千葉日報、日本農業新聞、共同通信など、多くのメディアでも取り上げていただきました。 -
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支援者の皆さんへ
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- 駆除の必要ない社会を実現するための長い長い道のりは、まだ始まったばかりです。その歩みを進めるにあたり、皆さんおひとりおひとりが野生動物と社会課題の橋渡しを担う仲間になっていただければ、こんなに心強いことはありません。それぞれのお立場から、ぜひお力添えいただければ幸いです。